「ただいま」とドアを開けて、ようやくたどり着いた我が家。 まずは一息つきたくて、バッグを部屋の隅へ、脱いだ上着はソファの背もたれや、目についた室内物干しにひょいと引っ掛けてしまう……。
そんな動作に心当たりはないですか?
「あとでちゃんと片づけよう」 その時はそう思って置いたはずの「とりあえず」たちが、いつの間にか部屋のあちこちに居座って、景色の一部になっていく。 でも、ふとした瞬間にその塊が視界に入ると、なんだか心がザワザワして、「片づけなきゃいけないのにできていない自分」を突きつけられているような気持ちになることがあります。
今回は、そんな暮らしの中に生まれる小さなノイズをそっと片づけて、心地よい眠りとくつろぎの時間を取り戻すヒントについてとりあげます。
「とりあえず」の積み重ねが、心のざわつきに
実は私たちの脳は、視界に入る情報のすべてを無意識に処理しています。 部屋の隅にあるバッグ、ソファに重なった上着、テーブルの端に積み上がったダイレクトメールなどなど。
それらは自分では無視しているつもりでも、脳にとっては「終わっていないタスク」として映っているのだそう。せっかくリラックスしようとソファに座っても、視界のどこかにそのノイズが入り込むと、脳は休まる暇がありません。
「なんとなく落ち着かない」「家の中にいるのに疲れが取れない」 もしそう感じているなら、それはあなたのせいではなく、空間に溜まった「とりあえず」という小さなノイズが、あなたの心の余白を少しずつ削ってしまっているからなのかもしれません。
まずは、その「とりあえず」を責めるのではなく、「今日も頑張ったじゃん」と自分を受け入れるところから始めてみましょう。
眠りを慈しむために。ベッドの周りを「余白」に戻す
一番リラックスしたい場所である寝室。でも冬のこの時期、ベッドの周りには「とりあえず」の温かな相棒たちで溢れがちです。
脱いだままのフリースや、ベッドの下にポツンと残されたルームソックス。あるいは、羽織っていたカーディガンがサイドテーブルを覆い隠してしまっていたり……。
これらはどれも寒さから自分を守ってくれている大切なアイテム。でも、眠りにつくその瞬間だけは、一度視界から外してあげましょう。
● 眠る前の「脱ぎっぱなし」を卒業する
ベッドに入る直前、脱いだルームソックスを「また明日履くから」と床に置くのではなく、定位置のバスケットに入れたり、棚の上に整えて置いたり。たったそれだけのことだけれど、ベッドから見える景色に「余白」が生まれます。
● 視界をクリアにして、脳を休ませる
眠る直前に目に入る風景が整っていると、脳は「もう今日は終わり。休んでいいんだよ」という信号をスムーズに受け取ることができます。 ふかふかの布団に、スッキリとしたサイドテーブル。 「とりあえず置き」をなくして生まれたその余白は、あなたを深い眠りへと誘なってくれるはずです。
リビングの一番いい場所に「自分」を座らせてあげる
リビングは、一日の中で一番長く過ごす場所かもしれません。だからこそ「とりあえず置き」の誘惑も一番多い場所です。
テーブルの端に無造作にある郵便物、ソファのクッションの隣に置かれた読みかけの本。そして、飲み終わったのにそのままになっているマグカップなどなど。
いつの間にか、リビングの主役が「自分」ではなく「物」になってること、多いかも。
● 「郵便物」は、情報のノイズ
郵便受けから持ってきて、ついテーブルに置いてしまう郵便物。実はこれ、視界に入るだけで「確認しなきゃ」という小さなタスクを脳に突きつけてくる、強力なノイズ。「後で」と思うものほど、一度お気に入りのカゴやトレイにまとめて、テーブルの上からは姿を消してあげましょう。
● 「読みかけの本」と「マグカップ」に休息を
読みかけの本がある部屋の眺めは素敵ですが、それがずっとあると重荷になります。一区切りついたら本棚へ、あるいは定位置へ。使い終わったマグカップもキッチンへ持っていく。 その「一動作」が、空間に流れる空気をスッと軽くしてくれます。
ソファやテーブルは、あなたが主役になれる「特等席」。 物をどかして座るのではなく、いつでも自分がふっと腰を下ろせる。リビングは、そんな「心の余裕」をあらわす場所にしましょう。
なぜ「とりあえず」置いてしまうの?自分を責めないための「物の住所」づくり
「とりあえず、ここに置いておこう」と決めたはずの場所が、気づけば書類や小物で溢れ、いつの間にか「見たくない場所」になってしまう……。実は、私も大ありです。
せっかく住所を決めても、そこが溜まり場になってしまうのは、あなたがだらしないからではありません。ただ、その場所が「今の自分」にとって、少しだけキャパシティオーバーになっているだけ。
そうならないために、心がけていることがあります。
● 「判断」を先送りにしない
特に溜まりやすいのが郵便物。「とりあえず置く」前に、その場で「いる・いらない」をなるべく仕分けること。とりあえず置いてしまっても、リビングにいる間に必ず仕分けています。
- いらないもの: その場でゴミ箱へ
- いるもの: 決まった住所(トレイやファイル)へ
これだけで、住所に運ばれる量が半分以下になります。中身を確認せずに置いてしまうと、それは単なる「紙の山」だけれど、仕分けることで「大切な情報」へと変わりますよね。そして、忘れ去らないよう、頭の隅に置いておけるようになります。
● 「住所」も時々、見直してあげる
もし決めた場所がいつも溢れてしまうなら、それは「そこに戻すのが少し大変」という心からのサインかもしれません。 完璧な工夫なんていりません。ただ「最近ここが混み合っているな」と気づいたら、勇気をもって、少しだけ中身を整理してあげましょう。
空間も、私たちと同じ。詰め込みすぎると息苦しくなってしまいます。「とりあえず」の場所を、時々深呼吸させてあげる。そんな気軽な気持ちで、物の住所と付き合っていけたらいいですよね。
眠る前の5分。一日の「お疲れさま」を空間にも
一日の終わり、皆さんはどんなふうに自分を休めていますか? 私は眠りにつく前のほんの5分だけ、空間に「お疲れさま」を伝えるようにしています。
散らばったものを元の位置へ戻し、今日もありがとうと明日への「余白」を少しだけ作る。そんな静かな儀式です。
● 鏡を眠らせる大切な習慣
寝室に姿見を置いているので、眠る前には必ずその鏡にお気に入りの布をかけるようにしています。 風水で「寝室に鏡は良くない」と聞いたことありませんか?それも一つだけれど、安眠の妨げになる気もします。鏡が映しだす「情報」が隠されることで、部屋の空気が穏やかになるのを感じます。
鏡に布をかける。それは、朝、オンにした自分のやる気スイッチを、オフに切り替えるような感覚です。
● 空間を「本来の姿」に戻してあげる
リビングのクッションを整える。 テーブルの上のマグカップを片づける。 最後に、鏡に布をかける。
一つひとつの動作は小さくても、そうして空間を「本来の姿」に戻してあげることで、心の中のざわつきも一緒に静まっていくのを感じます。酔っぱらって帰ってきても、一つでもその動作をすることで、頭と心がクリアになっていくものです。時には、途中で電池切れになってしまうこともありますが(笑)
「明日また気持ちよく一日をスタートできますように」。 空間に込めたその願いが、自分自身を優しく労うご自愛タイムになります。
空間が整うと、明日の自分がちょっと好きになる
「とりあえず置き」をそっと片づけて、空間に余白をつくる。 それは、今の自分を心地よくするだけでなく、未来の自分へ「ゆとり」をつくってあげることでもあります。
夜、眠る前にリビングや寝室をふんわりと整えておくと、翌朝、目に入る景色が、自分を優しく迎えてくれます。
今日、ほんの少しだけ「暮らしのノイズ」を整えることができれば、明日の朝はきっと、今日よりもずっと穏やかに目覚めることができるはず。
自分が深呼吸できる場所。 そんなふうに思えるだけで、心は驚くほど軽やかになのでは。
